先月末、約半年ぶりに家のポストを開けたらとても貫禄がある茶封筒がカビて真っ黒になってるチラシの間に挟まっていた。差出人は上京前に住んでいた自治体。
「僕、とうとう観光大使にでもなるのかな!僕ほど優れている人間なんていないし、しょうがないなぁ~」などと訳のわからんことを考えながら封を開けると……
令和2年11月xx日
こあちぇる様
札幌市xx区役所
納付催告書
下記の国民健康保険料については、これまでにも納付催告をしてきましたが、いまだに納付がありません。
つきましては、指定期日までに必ず納付してください。
指定期限までに納付が無い場合は、不本意ながら国税徴収法に基づき財産の差し押さえを執行します。
……ほう?
人生の終わりじゃん。
よく見てみると、過去のチャランポランだった時期に「は?wなもん知るかタコ!笑」などと抜かしてガン無視していた健康保険料だった。……マジで何やってんだよ。
自慢じゃないけど、確かに健康保険料を一度でも払ったような記憶が無い。そうなれば金額もなかなかなものになるし、実際に結構きつめの額だった。あんなことやこんなことにお金を使っている僕は今更金がないなんて口が裂けても言えん。
でも実際手元に金はないし、欲望に金を使うより、一刻も早くこの未納保険料を納付すべきだったと無限に後悔した。
今更なにを言っても言い訳にしかならないけど、ポスト開けたらしょうもないチラシがごっそり入っているような東京という土地で、毎日ポストを開けて中身を確認するなんてめんどくさいじゃん。札幌住んでた時はちゃんとできていたけど、その忌々しいチラシのおかげでポストという概念が消え去っていたから仕方ないだろとは思ったけど、仕方ないわけがない。散々世話になった国民健康保険の金さえもまともに払わなかったゴミクズのような僕が今できることは、遥か果てのお役所様に「やばいです!指定日までにお金払えません!ちょっとだけ待ってください!何でもしますから!」と漫画でありがちな借金抱えまくった人間が闇金相手にするような電話だけ。
「ウォゥテメエいつになったら金返すんだアァン??あくしろや!」などと怒鳴られる覚悟で、おしっこもらしそうになりながら、仕事中だけど電話した。
……が、意外と普通の人が普通の声でしゃべっていて、一瞬電話番号を間違えたのかと思った。その後、金払えんという旨の話をしても態度が豹変することなく、5分ちょっとくらいで話が終わった。もしかしたら変なコールセンターなんかより全然しっかりしてたかもしれない。なんなら向こうから「あれだったら分納とかもできますが」みたいなこと言ってきたし、用意されたものは全力で使っていくタイプなので遠慮なく分納にした。
これで僕のなんの魅力もない財産がお役所に回収されることなく済んだ。20歳で結婚して最近は車を買うと騒ぎ散らかしている弟がいるにも関わらず、エロゲヒロイン抱き枕に猿の如く腰を振っている僕なんかでも、まだ生きてていいんだ……そんな風に思えた。